「請求書業務のために出社が必要」「電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が迫られている」こうした課題を抱えていませんか?
請求書の電子化は、単なるペーパーレス化を超え、コスト削減、業務効率化、そして法対応を実現する重要な経営課題となっています。
この記事では、請求書電子化の基礎知識から、具体的なメリット・デメリット、導入の手順、そして見落とせない法律要件まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。
この記事の目次・紙との違い:発行、送付、保存のプロセスがデジタルで完結
・電子請求書(デジタルインボイス):構造化されたデータ(EDI、XMLなど)または非構造化データ(PDFなど)で送受信される請求書
・発行側・受領側:双方にメリットがあり、電子化の連鎖が進んでいる
従来の紙の請求書は、印刷、封入、郵送といった物理的な作業とコストが発生しました。
一方、請求書の電子化は、これらのプロセスをデジタルデータ(PDFやEDIなど)の送受信に置き換えます。
これにより、発行から受領、さらには経理システムへの入力や保存・管理に至るまで、業務全体が大幅に効率化されます。
電子請求書(デジタルインボイス)とは、電子的に送受信される請求書データを指します。
これには、単なるPDFファイルだけでなく、EDI(電子データ交換)やXMLといった、システムが直接読み取り可能な「構造化データ」も含まれます。
電子化は、請求書を発行する側と受領する側の双方で進める必要があります。
発行側はコスト削減や入金サイクルの短縮、受領側はデータ入力の自動化や管理の容易化といったメリットを享受できます。
近年は、発行・受領の両方に対応したクラウドサービスが普及しています。
・電子帳簿保存法
・インボイス制度
・テレワークと業務効率化
電子帳簿保存法(電帳法)の改正が、電子化を強力に後押ししています。
国税庁の改正により、電子取引データについては原則として2024年1月1日から電子保存が本格適用され、従来の"紙での保存"は原則として廃止されました。ただし税目や事業規模によって細かな扱いや経過措置があるため、実務対応は国税庁の最新資料で確認してください。
メールなどで受け取ったPDFの請求書を紙に出力して保存する方法が認められなくなり、多くの企業がシステム対応を迫られています。
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)も大きな要因です。
インボイス(適格請求書)には、税率ごとの消費税額や登録番号などの記載が義務付けられました。
受領側はこれらの記載要件の確認や仕分け作業が煩雑になるため、システムによる自動化ニーズが高まっています。
新型コロナウイルスの影響でテレワークが急速に普及しました。
しかし、請求書の発行や受領、押印のために「ハンコ出社」が必要になるなど、紙ベースの業務がテレワークの障壁となりました。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の観点からも、請求業務の効率化は喫緊の課題となっています。
・コスト削減
・業務効率化
・保管スペース削減・検索性向上
・テレワーク・BCP対策
最も直接的なメリットはコスト削減です。
紙の請求書で発生していた以下のコストが不要になります。
発行件数が多い企業ほど、削減効果は大きくなります。
手作業が大幅に削減され、業務効率化に直結します。
発行側は、印刷・三つ折り・封入・投函といった作業が不要になり、システムからワンクリックで送付が完了します。
受領側も、開封、スキャン、システムへの手入力といった作業がなくなり、月次決算の早期化にも寄与します。
電子データとして保存するため、物理的な保管スペース(キャビネットや倉庫)が不要になります。
また、紙のファイルから探す手間がなくなり、日付や取引先名、金額などで瞬時に検索できるようになります。
監査対応や過去の取引確認が迅速に行えます。
請求業務のために出社する必要がなくなり、完全なテレワークを実現しやすくなります。
また、データはクラウド上やサーバーに保存されるため、災害時にも書類の紛失・焼失リスクを回避できます。
事業継続計画(BCP)の観点からも、電子化は重要です。
・初期コスト・導入の手間
・業務フロー変更・社内教育
・取引先の協力
請求書電子化システムの導入費用(初期コスト)や月額利用料が発生します。
また、どのシステムを選定し、どのように設定・導入するかという手間もかかります。
対策として、まずはスモールスタートできるクラウドサービスを選び、前述のコスト削減効果と比較検討することが重要です。
従来の紙ベースの業務フローを大幅に変更する必要があります。
経理担当者だけでなく、請求書を発行する営業部門など、関連部署への周知と教育が不可欠です。
新しいツールの操作方法や、電子帳簿保存法に対応した運用ルールを策定し、マニュアルを整備する必要があります。
請求書は取引先があって初めて成り立つ文書です。
自社が電子化しても、取引先が「紙で郵送してほしい」と希望する場合、電子化のメリットが半減します。
電子化への切り替えをお願いする案内状を送付し、取引先にとってもメリット(受領の手間削減など)があることを丁寧に説明し、理解を得る努力が必要です。
・ステップ1:現状の業務フローと課題の整理
・ステップ2:電子化の範囲と方式の決定
・ステップ3:システムの選定と導入
・ステップ4:取引先への周知と運用開始
まずは現状把握から始めます。
「誰が」「いつ」「どのように」請求書を作成・承認・発行・管理しているかを可視化します。
「時間がかかっている」「ミスが多い」「管理が煩雑」といった課題を具体的に洗い出します。
洗い出した課題に基づき、どこまで電子化するかを決定します。
例えば、「まずは発行業務だけ」「受領業務も同時に」「会計システムとの連携まで」などです。
PDFでのメール送付、電子請求書発行システムの利用、EDI取引など、具体的な電子化の方式も検討します。
決定した要件(範囲や方式)に基づき、請求書電子化システムを選定します。
複数のサービスを比較検討し、自社の業務量や予算、必要な機能(後述)を満たすものを選びます。
導入ベンダーのサポートを受けながら、システムの設定やテストを行います。
システム導入と並行して、取引先への周知を行います。
電子化への切り替え時期、送付・受領方法の変更点などを事前に丁寧にアナウンスします。
社内教育も完了させ、まずは一部の取引先からスモールスタートし、徐々に対象を拡大していくのが現実的です。
・ポイント1:自社の発行・受領の業務量
・ポイント2:電子帳簿保存法・インボイス制度への対応
・ポイント3:既存システム(会計ソフトなど)との連携
・ポイント4:操作性とサポート体制
自社の請求書の取扱件数(発行・受領)が選定の基本となります。
件数が少ない場合は、送付機能が中心のシンプルなサービスで十分かもしれません。
件数が多い場合や受領業務も効率化したい場合は、AI-OCRによる読み取り機能やワークフロー機能が充実したシステムが必要です。
法改正への対応は必須条件です。
電子帳簿保存法の「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たしているか(タイムスタンプや検索機能など)を確認します。
また、インボイス制度に対応し、適格請求書の発行や受領したインボイスの登録番号検証などができるかも重要です。
請求書データが既存のシステムと連携できるかを確認します。
特に会計ソフトや販売管理システムと自動連携(API連携やCSV出力)できれば、仕訳入力の手間が削減され、経理業務全体が効率化されます。
経理担当者だけでなく、現場の担当者も使いやすい、直感的な操作画面(UI)であるか重要です。
無料トライアルなどで実際の使用感を確認しましょう。
また、導入時の設定サポートや、運用開始後の問い合わせ窓口(チャット、メール、電話)といったサポート体制が充実しているかも確認ポイントです。
・電子帳簿保存法の保存要件:真実性の確保と可視性の確保
・インボイス制度における電子インボイス:受領側も電帳法要件での保存が必須
・PDFのメール送付:受領側が保存要件を満たすのが困難な場合がある
電子取引データを保存する際は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
主に以下の2点です。
単にフォルダにPDFを保存するだけでは要件違反となる可能性が高いです。
インボイス制度では、電子データで提供された適格請求書(電子インボイス)も有効です。
発行側は、紙と同様にインボイスの写しを保存する義務があります。
受領側は、受け取った電子インボイスを、前述の電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。これが仕入税額控除の要件となります。
請求書PDFを作成し、メールに添付して送る方法も電子化の一つです。
しかしこの方法では、受領側が電子帳簿保存法の保存要件(検索機能など)を満たすのが困難になる場合があります。
また、発行側も送付履歴の管理が煩雑になりがちです。専用システムの利用が推奨される理由がここにあります。
請求書の電子化は、単なるコスト削減に留まりません。
業務効率化、テレワーク対応、BCP対策など、企業経営の基盤強化に直結する重要な取り組みです。
特に「電子帳簿保存法」と「インボイス制度」という2つの法律への対応は、待ったなしの状況です。
電子化を進める際は、必ず法律要件を満たすシステムを選定することが重要です。
いきなり全社・全取引先で導入するのが難しい場合は、発行業務から、あるいは特定の取引先から、といった段階的な導入(スモールスタート)を検討しましょう。
本記事を参考に、自社の課題解決に向けた第一歩を踏出してください。