制度会計とは?目的や管理会計との違い、主要な財務諸表を解説

20251021_制度会計とは?目的や管理会計との違い

 

企業の経理や財務に関わると、「制度会計」という言葉を耳にすることがあります。しかし、「管理会計」との違いがよくわからない、具体的に何を指すのか曖昧という方も多いのではないでしょうか。制度会計は、企業の経済活動を外部に正しく伝えるための共通言語であり、ビジネスの根幹を支える重要な仕組みです。

この記事では、制度会計の基本的な概念から、その目的、管理会計との明確な違い、そして制度会計を支える主要な法律や財務諸表について、初心者にも分かりやすく解説していきます。

制度会計とは

外部利害関係者:株主、投資家、債権者、税務署など、企業の外部にいる関係者のこと

会計基準:財務諸表を作成するための統一されたルールのこと

財務諸表:企業の財政状態や経営成績を報告するための書類の総称

制度会計とは、法律や会計基準といった社会的なルールに基づいて行われる会計のことです。主に、企業の外部にいる利害関係者に対して、企業の財政状態や経営成績を報告することを目的としています。

 

Web入力画面構築サービス

 

外部利害関係者への情報提供を目的とする会計

制度会計が情報を報告する相手は、企業の「外部」にいる人々です。具体的には、以下のような利害関係者が挙げられます。

  • 株主・投資家:投資の判断材料として企業の収益性や安全性を評価する
  • 債権者(銀行など):融資の可否や返済能力を判断する
  • 取引先:継続的な取引が可能かどうかを判断する
  • 税務署:税金の額を正しく計算・徴収する

これらの人々が客観的な判断を下せるよう、公平で信頼性の高い情報を提供することが制度会計の重要な役割です。

法律や会計基準に基づく厳格なルール

外部への情報提供という公的な性格上、制度会計は企業が自由に作成して良いものではありません。

会社法、金融商品取引法、法人税法といった法律や、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(GAAP)」などの会計基準によって、従うべきルールが厳格に定められています。これにより、報告される情報の信頼性と企業間の比較可能性が担保されます。

企業の財政状態と経営成績の報告

制度会計が報告する内容は、大きく分けて2つあります。

一つは、決算日時点での企業が持つ資産や負債の状況を示す「財政状態」です。もう一つは、一会計期間(通常は1年間)にどれだけ儲けたかを示す「経営成績」です。これらは、後述する「財務諸表」という形式で報告されます。

制度会計の目的

意思決定支援

比較可能性

受託責任

制度会計は、なぜ法律で義務付けられているのでしょうか。その背景には、社会経済の円滑な運営を支えるための重要な目的があります。

投資家や債権者の意思決定支援

制度会計の最も重要な目的は、投資家や債権者の合理的な意思決定を支援することです。

投資家は「この会社の株を買うべきか」、銀行などの債権者は「この会社にお金を貸しても安全か」を判断するために、信頼できる会計情報を必要とします。制度会計が提供する財務諸表は、そのための客観的な判断材料となります。

企業間の比較

すべての企業が同じ会計基準に従って財務諸表を作成することで、異なる企業同士の業績や財政状態を比較することが可能になります。

例えば、同業他社と比較して自社の収益性は高いのか、成長性はどうかなどを分析できます。これにより、資本市場における資源の効率的な配分が促進されます。

企業の受託責任の明確化

株式会社において、経営者は株主から会社の経営を委託されています。これを「受託責任(アカウンタビリティ)」と呼びます。

経営者は、株主から預かった資金をどのように運用し、どのような成果を上げたのかを報告する義務があります。制度会計は、この受託責任を果たすための公式な報告手段としての役割を担っています。

制度会計と管理会計の主な違い

報告対象者:外部か、内部か

報告目的:過去の実績報告か、未来の意思決定か

準拠ルール:法律による強制か、任意か

制度会計とよく対比されるのが「管理会計」です。両者は同じ「会計」という言葉が付きますが、その目的や性質は大きく異なります。

報告対象者の違い

最も根本的な違いは、誰のために会計を行うかという点です。

  • 制度会計:株主や債権者など「外部」の利害関係者が対象。
  • 管理会計:経営者や各部門のマネージャーなど「内部」の人間が対象。

報告目的の違い

報告の目的も異なります。制度会計は過去の結果を報告するのに対し、管理会計は未来の行動に焦点を当てます。

  • 制度会計過去の経営成績や財政状態を正しく報告することが目的(過去志向)。
  • 管理会計将来の経営計画策定や業績評価、意思決定に役立てることが目的(未来志向)。

準拠するルールの違い

制度会計には従うべき厳格なルールが存在しますが、管理会計にはありません。

  • 制度会計:会社法や会計基準など、法律で定められた強制力のあるルールに従う必要がある。
  • 管理会計:法律などの縛りはなく、企業が自社の目的に合わせて自由にルールや形式を定めることができる。

制度会計を構成する主要な法律

会社法

金融商品取引法

法人税法

制度会計は、主に3つの法律によって規制されています。それぞれの法律で目的が異なるため、作成される計算書類も少しずつ異なります。

会社法

すべての株式会社に対して、計算書類(貸借対照表、損益計算書など)の作成と開示を義務付けている法律です。

主な目的は、株主や債権者の保護です。株主総会で株主に計算書類を報告し、承認を得る必要があります。

金融商品取引法

上場企業など、有価証券を発行している企業に対して、有価証券報告書の提出を義務付けている法律です。この報告書には、会社法の計算書類よりも詳細な財務諸表が含まれます。

主な目的は、投資家の保護であり、より広範な利害関係者の判断に資する情報開示が求められます。

法人税法

企業の法人税額を公正に計算・申告するための法律です。

会計上の利益(収益から費用を引いたもの)と、税法上の所得(益金から損金を引いたもの)は必ずしも一致しないため、その差を調整する「税務調整」という手続きが必要になります。課税の公平性を確保することが目的です。

制度会計における主要な財務諸表

貸借対照表(B/S):特定の時点における企業の財産状況を示す

損益計算書(P/L):一定期間における企業の儲けを示す

キャッシュ・フロー計算書(C/F):一定期間における企業の現金の増減を示す

制度会計の報告は、「財務諸表」という一連の書類によって行われます。中でも特に重要なのが「財務三表」と呼ばれる以下の3つです。

貸借対照表(B/S)

貸借対照表(Balance Sheet)は、決算日という「一時点」において、企業がどのような資産を持ち、どのような負債を抱えているか、そして差し引きの純資産はいくらか、といった財政状態を示す報告書です。

「資産 = 負債 + 純資産」という関係が常に成り立つため、バランスシートと呼ばれます。

損益計算書(P/L)

損益計算書(Profit and Loss Statement)は、会計期間という「一定期間」(通常1年間)に、企業がどれだけの収益を上げ、そのためにどれだけの費用を使い、最終的にどれだけの利益(または損失)が出たのかという経営成績を示す報告書です。

企業の収益力を評価するための重要な資料となります。

キャッシュ・フロー計算書(C/F)

キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow Statement)は、損益計算書と同じく「一定期間」における、現金の増減(キャッシュの動き)を示した報告書です。

利益が出ていても現金が不足して倒産する「黒字倒産」を避けるためにも、現金の動きを把握することは極めて重要です。営業活動、投資活動、財務活動の3つの区分でキャッシュの増減が示されます。

まとめ

今回は、制度会計の基本について解説しました。最後に、本記事の要点をまとめます。

  • 制度会計は、株主や投資家といった外部の利害関係者への報告を目的とする会計である。
  • 会社法や金融商品取引法などの法律や会計基準に基づいた厳格なルールに従って行われる。
  • 内部向けの管理会計とは、目的、対象者、準拠するルールの点で大きく異なる。
  • 主要な報告書である財務諸表には、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書(C/F)がある。

制度会計は、一見すると複雑で難しいルールに縛られているように感じるかもしれません。しかし、それは企業の信頼性を担保し、公正な経済活動を支えるための重要な仕組みです。この機会に制度会計への理解を深め、日々の業務やニュースの読解に役立てていきましょう。

 

Web入力画面構築サービス

ContactUS