記帳の仕方入門:具体的な仕訳例と必要性を学ぶ

20250901_記帳の仕方入門

 

はじめに

個人事業主や会社の経理を担当する上で、記帳は避けて通れない重要な作業です。「なぜ記帳が必要なの?」「仕訳の仕方が具体的によくわからない」といった悩みを抱えていませんか?この記事では、記帳の基本的な考え方から、事業におけるその重要性、そして具体的な仕訳の方法までを分かりやすく解説します。正しく記帳を行うことで、経営状況の把握やスムーズな確定申告が可能になります。

1. 記帳とは?その目的と必要性

記帳とは、事業における日々の取引(売上、経費、資金の移動など)を、一定のルールに従って帳簿に記録する作業のことです。その主な目的は、お金の流れを正確に把握し、事業の財政状態や経営成績を明らかにすることにあります。この記録は、年に一度の確定申告で税額を正しく計算・申告するための基礎資料となります。また、単なる税務上の義務としてだけでなく、自社の経営状況を客観的に分析し、将来の事業計画を立てるための重要な判断材料としても機能します。

さらに、記帳が事業にとって不可欠である理由は、以下の3つの具体的な側面に集約されます。

理由1:正確な確定申告のため

事業者は、1年間の所得を計算し、それに応じた税金を納める義務があります。その所得を正しく計算するための根拠となるのが、日々の記帳です。特に、最大65万円の特別控除が受けられる青色申告を行うためには、複式簿記という正規のルールに則った記帳が必須となります。記録が不正確だと、本来よりも多くの税金を納めてしまったり、逆に追徴課税などのペナルティを受けたりするリスクがあります。

理由2:経営状況を正確に把握するため

記帳は税金のためだけに行うものではありません。作成された帳簿は、自社の「健康診断書」とも言えます。売上は伸びているか、利益は出ているか、無駄な経費は発生していないか、といった経営状況を客観的な数字で把握できます。このデータに基づいて「どの分野に投資すべきか」「どうすれば資金繰りが改善するか」といった経営判断を下すことができ、事業の成長に繋がります。

理由3:社会的な信用を得るため

金融機関から融資を受けたい場合や、新たな取引先と契約を結ぶ際、多くの場合で決算書の提出を求められます。決算書は、記帳されたデータをもとに作成される、事業の成績表です。日頃から正確な記帳を行い、信頼性の高い決算書を作成しておくことは、事業の健全性や将来性を示すことになり、社会的な信用を得る上で非常に重要です。

2. 記帳の主要な構成要素

記帳は、いくつかの基本的な要素から成り立っています。

  • 取引の記録:売上や仕入れ、経費の支払いといった日々のすべての取引を、領収書や請求書などの証憑(しょうひょう)に基づいて記録します。
  • 仕訳(しわけ):取引を勘定科目という分類項目を用いて、借方(かりかた)と貸方(かしかた)に振り分ける作業です。複式簿記の根幹をなす手続きで、これにより取引の原因と結果が明確になります。
  • 帳簿への転記:仕訳した内容を、総勘定元帳などの正式な帳簿に書き写す作業です。会計ソフトではこの工程は自動化されます。
  • 証憑の整理・保管:記録の根拠となる領収書、請求書、契約書などを整理し、法律で定められた期間保管します。


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3. 具体的な記帳方法:仕訳の例

ここでは、最も基本的な「仕訳」の仕方について、具体的な例を挙げて見ていきましょう。複式簿記では、1つの取引を「原因」と「結果」の2つの側面から捉え、帳簿の左側(借方)と右側(貸方)に記録します。

【例】2025年8月13日に、事業用のパソコンを15万円の現金で購入した

この取引を分析すると、以下のようになります。

  • 原因(資産の増加):「備品(パソコン)」という資産が15万円増えた。
  • 結果(資産の減少):「現金」という資産が15万円減った。

この関係性を、以下のように仕訳帳に記録します。ルールは「資産の増加は左(借方)」「資産の減少は右(貸方)」です。

借方(左) 貸方(右)
備品 150,000 現金 150,000
摘要:パソコン購入

このように、すべての取引で借方と貸方の金額が必ず一致します。なお、10万円以上の備品は固定資産として、使用期間にわたって費用計上(減価償却)するのが一般的ですが、まずはこの基本の形を覚えましょう。

4. 記帳の活用シナリオ例

記帳によって整理されたデータは、様々な場面で役立ちます。

経営状態の可視化による意思決定の迅速化

月次や四半期ごとに試算表を作成することで、売上や利益の推移をリアルタイムで把握できます。どの経費がかさんでいるか、どの事業が好調かなどを分析し、次の経営戦略に活かすことができます。

資金繰りの管理と改善

日々の入出金を正確に記録することで、将来の資金繰りを予測しやすくなります。資金ショートのリスクを事前に察知し、融資の申し込みや支払いサイクルの見直しといった対策を早期に講じることが可能です。

5. 会計ソフトを利用するメリット・デメリット

記帳作業を効率化する会計ソフトの利用には、多くの長所がありますが、いくつかの短所も存在します。

メリット デメリット
・作業時間の大幅な短縮
・計算ミスなどの人的エラーの防止
・法改正や税制へ自動で対応
・経営状況をリアルタイムで可視化
・導入や月額の費用がかかる
・操作に慣れるまで時間が必要
・簿記の知識が身につきにくい場合がある

6. 関連用語の解説

勘定科目(かんじょうかもく)
取引の内容を分かりやすく分類するためのラベルのこと。「現金」「売上」「消耗品費」などがあります。
借方(かりかた)・貸方(かしかた)
複式簿記で帳簿の左側を「借方」、右側を「貸方」と呼びます。資産の増加や費用の発生は借方に、負債・純資産の増加や収益の発生は貸方に記録されます。
確定申告(かくていしんこく)
1年間の所得とそれに対する税額を計算し、税務署に申告・納税する手続き。法人は事業年度終了後、個人事業主は原則として翌年2月16日から3月15日までに行います。

7. まとめ

記帳は、単なる義務的な経理作業ではなく、自社の経営を健全に保ち、成長させるための重要な羅針盤です。この記事で解説したポイントは以下の通りです。

  • 記帳は、①正確な申告、②経営状況の把握、③社会的信用の獲得、という3つの点で不可欠。
  • 一つの取引を「借方」と「貸方」に分ける仕訳が記帳の基本。
  • 具体的な仕訳例を参考に、取引を「資産・負債・純資産・費用・収益」のどれに当たるか考えてみましょう。
  • 日々のこまめな記録が、将来の経営分析や円滑な確定申告につながる。

まずは日々の領収書を整理し、この記事の仕訳例を参考にしながら記録を始めることが、正確な記帳への第一歩です。

 

 

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