PDFの資料からテキストをコピーしようとしたら、「コピペできない」「文字化けする」といった経験はありませんか? もしかすると、それは紙の書類をスキャンしただけの「画像PDF」かもしれません。
この記事では、PDF内の文字を正確にテキストデータとして抽出する(テキスト化する)ための具体的な方法を徹底解説します。無料ツール、高精度なOCR機能、セキュリティ制限への対処法まで、状況に応じた最適な解決策をご説明します。

PDFのテキスト化とは
・テキスト抽出の仕組み:文字情報の読み取り、またはOCR(光学的文字認識)による解析
・ビジネスシーン:資料引用、データ変換、情報再利用
・PDFの種類:テキスト埋め込み型(コピペ可)と画像型(コピペ不可)
PDFから文字を抽出する仕組み
PDF内部に元から保持されているテキスト情報を直接読み取る方法が基本です。
スキャンされた画像PDFの場合は、OCR(光学的文字認識)技術を使い、画像内の文字を解析してテキストデータに変換します。
テキスト化が必要となる主なビジネスシーン
PDFのテキスト化は、様々な業務効率化に役立ちます。
- 契約書や報告書から特定の条文やデータを引用する時
- 紙の資料をスキャンしたPDFを、編集可能なWordやExcelデータに変換する時
- 過去の資料からテキストをコピーし、新しい資料作成に再利用する時
PDF内のデータの種類(テキスト埋め込み型と画像型)
PDFには大きく分けて2つの種類があり、これがコピペ可否の分かれ目です。
「テキスト埋め込み型」は、Wordなどから直接作成されたもので、見た目通りテキスト情報を持っています。そのため、容易にコピペや検索が可能です。
一方、「画像型」は、紙の書類をスキャンして作成されたもので、中身は文字ではなく単なる「画像」です。このタイプはそのままではコピペできません。
PDFをテキスト化する主な方法
・コピー&ペースト
・専用の変換ツール・Webサービス
・Google ドキュメント(OCR機能)
・スマートフォンアプリ
PDF閲覧ソフトでのコピー&ペースト
Adobe Acrobat Readerなどの閲覧ソフトの選択ツールを使い、テキストをドラッグしてコピー(Ctrl+C)し、メモ帳などに貼り付け(Ctrl+V)ます。
これは、PDFが「テキスト埋め込み型」であり、かつセキュリティ制限がかかっていない場合の最も簡単な方法です。
専用の変換ツール・Webサービスの利用
PDFをWord、Excel、または単純なテキスト(.txt)ファイルに変換する専門のツールやWebサービスを利用します。
多くのサービスがドラッグ&ドロップで手軽に変換でき、レイアウトの維持も試みてくれます。
Google ドキュメントのOCR機能の活用
Google ドライブにPDFをアップロードし、右クリックして「アプリで開く」>「Google ドキュメント」を選択します。
Googleが自動的にOCR処理を行い、PDFの画像(もしあれば)の下に抽出されたテキストを表示します。無料で利用できる強力な方法です。
スマートフォンアプリでのスキャンとテキスト化
スマートフォンのカメラ(またはスキャナアプリ)で紙の書類を撮影し、アプリのOCR機能でその場でテキストデータに変換します。
外出先で受け取った名刺やレシートの情報を素早くデータ化するのに便利です。

【状況別】テキスト化できないPDFの原因と対処法
・セキュリティ設定:コピーが許可されていない
・画像PDF:中身がテキストではなく画像のため、OCRが必要
・文字化け:フォントの問題やOCRの認識ミス
原因1:セキュリティ設定によるコピー制限
PDFの作成者が、印刷やコピー、編集を制限するセキュリティ(権限パスワード)を設定している場合があります。
この場合、パスワードを知らない限り、原則としてテキストのコピーはできません。作成者に連絡して制限を解除してもらうのが正規の対処法です。
原因2:PDF全体が「画像」の場合
前述の通り、スキャンして作成されたPDFは中身が「画像」であるため、そもそもコピー&ペーストの対象となるテキスト情報が存在しません。
この問題を解決するには、画像内の文字を認識する「OCR(光学的文字認識)」機能が必須です。
原因3:テキスト化後の「文字化け」の修正
テキスト化に成功しても、文字が「?」や意味不明な記号になる「文字化け」が発生することがあります。
これは、PDF作成時のフォント埋め込みの問題や、OCRの認識ミスが原因です。高精度なOCRツールを試すか、別の変換ソフトで再度処理することで改善する場合があります。
PDFテキスト化ツールの選び方
・テキスト抽出の精度
・OCR(光学的文字認識)機能の有無
・利用環境
・無料版と有料版の違い
ポイント1:テキスト抽出の精度(日本語・レイアウト維持)
特に日本語の認識精度はツールによって差が出ます。縦書きや特殊なフォントに対応しているか確認が必要です。
また、元のPDFのレイアウト(段組みや表)をどれだけ忠実に再現できるかも重要な選定基準です。
ポイント2:OCR(光学的文字認識)機能の有無
スキャンされた「画像PDF」を扱う可能性が少しでもあるなら、OCR機能は必須です。
単なるテキスト抽出ツールと、OCR機能付きツールは明確に区別して選びましょう。
ポイント3:利用環境(Webサービス、PCソフト、スマホアプリ)
手軽に試したいならWebサービス、機密情報を扱うならオフラインのPCソフト、外出先ならスマホアプリが適しています。
セキュリティポリシーや利用頻度に合わせて選びましょう。
ポイント4:無料版と有料版の違い
無料版は多くの場合、ページ数制限、ファイルサイズ制限、または機能制限(例:OCR非対応)があります。
有料版は、高精度なOCR、一括処理(バッチ処理)、レイアウトの高度な再現、サポート体制などを提供します。
PDFテキスト化の精度を高めるコツ
・元データの画質(解像度)の確保
・OCR実行時の正しい言語設定
・複雑なレイアウトの事前確認
元データの画質(解像度)の確保
OCRの精度は、元となる画像の品質に大きく依存します。
スキャンする際は、解像度300dpi以上を目安にし、文字がかすれたり、傾いたりしないよう注意深くスキャンすることが重要です。
OCR実行時の正しい言語設定(日本語の指定)
多くのOCRツールでは、認識対象の言語を選択するオプションがあります。
ここで「日本語」を正しく指定しないと、英語として処理され、著しく認識精度が低下します。
複雑なレイアウト(表や段組み)の事前確認
OCRは、複雑な表、段組み、または背景に模様があるページの認識を苦手とします。これらの要素はOCRの精度を低下させるリスクファクターです。事前に段組みを解除したり、表部分を画像として切り出して別処理するなどの工夫が有効です。
期待通りにテキスト化できない場合、該当箇所だけを切り出して処理するか、手動での修正を前提とする必要があります。
まとめ
・方法とツールの比較一覧
・最適なテキスト化手段の選択
PDFテキスト化の方法とツールの比較一覧
これまで解説したPDFテキスト化の方法を、目的別にまとめます。
| 方法 |
特徴 |
向いている人 |
| コピー&ペースト |
最も手軽。テキスト埋め込み型のみ。 |
セキュリティ制限のないPDFから部分的に引用したい人。 |
| Google ドキュメント |
無料で高精度なOCRが使える。 |
画像PDFを無料でテキスト化したい人。 |
| 無料Webサービス |
インストール不要で手軽。機能制限あり。 |
たまに変換する程度で、機密情報を含まないPDFを扱う人。 |
| 有料PCソフト |
高機能・高精度。オフラインで安全。 |
業務で頻繁に画像PDFを扱う、または高度な編集が必要な人。 |
| スマホアプリ |
スキャンとOCRを同時に行う。 |
外出先で紙の書類を素早くテキスト化したい人。 |
用途別:最適なテキスト化手段の選び方
PDFのテキスト化は、「PDFが画像型かテキスト型か」「セキュリティ制限はあるか」を正しく見極めることから始まります。
まずは手軽なコピペを試し、それができない場合は画像PDFを疑い、Google ドキュメントのOCR機能を使ってみましょう。
業務で日常的に高精度な変換が必要な場合は、有料のPCソフト導入が、長期的な作業効率の向上に繋がります。ぜひご自身の環境に最適な方法を見つけてください。
